ケンブリッジ大合格!母娘対談 – #最終話 日本を捨てずに、世界とつながる

これまで3話にわたり、シンガポール教育の環境や仕組みについて、娘のKOKOと話してきました。
多文化な日常、学力だけでは測れない「グローバル力」、正解を探すのではなく答えを作る教育。
最終話では、こうした環境で育ったKOKO自身が、何を感じ、何に気づいたのかを見ていきます。

「勉強が苦じゃなくなった」という答え

最後に、KOKOに聞いてみました。

「シンガポールで育って良かったと思うことは何?」

すると、少し考えてからこう答えました。

「勉強することが苦じゃなくなったことかな。」

「それってどういうこと?」

「小さい頃から、勉強することが生活の一部だったから。特別に頑張るものじゃなくて、普通にやるものになっていた。」

これは、すごく大きなことだと思います。
勉強が得意かどうか以前に、「学ぶことが当たり前」という感覚。
それは、環境によって作られる部分が大きいからです。もちろん、日本でも同じような環境を作ることはできます。でも、シンガポールの場合は、社会全体が「学ぶこと」を重視している。そこに大きな違いがあります。

「頑張って勉強する」と「普通に勉強する」の間には、想像以上に大きな距離があります。
前者は、いつか息切れする可能性を抱えたモチベーションです。
後者は、生活そのものに組み込まれた、無理のない習慣です。KOKOの言葉は、この違いをシンプルに言い表しています。

グローバルになることは、日本を捨てることではない

私は、これからの日本に必要なのは、シンガポールをそのまま真似することではないと思っています。
シンガポールにはシンガポールの歴史があります。
小さな国だからこそ、世界とつながらなければ発展できなかった背景があります。

一方で、日本には日本にしかないものがあります。
長い歴史。文化。人への気遣い。丁寧さ。相手を思いやる心。それらは、世界に出た時に大きな価値になります。

「こっちゃんは、自分が日本人だなって思うところってある?」

「うーん……。人への気遣いとかかな。列に並ぶとか、人の話を聞くとか、お土産を持っていくとか。そういう、なんでもいいけど『こうした方がいいよね』っていう感覚は、日本っぽいと思う。」

グローバルになるということは、外国の人になることではありません。

自分自身を持ったまま、世界と関われる人になること。
それが、本当の意味でのグローバル力なのだと思います。

多文化な環境で14年育ってきたKOKOの口から、日本らしさへの静かな肯定が出てきたことは、私にとって象徴的な瞬間でした。海外で育つことは、日本人としてのアイデンティティを薄めることではなく、むしろそれを自分で選び直す機会になるのかもしれません。

世界を見ることで、日本の価値に気づく

海外に出る意味は、「日本を離れること」ではありません。むしろ、外に出ることで初めて、日本の良さに気づくことがあります。

「シンガポールに来て思ったけど、日本って当たり前にすごいことが多いと思う。」

「日本だけにずっといると、自分たちの良さって意外と分からない。」

日本にいると、丁寧なサービスや安全な環境、相手を思いやる文化は「普通」に感じてしまいます。
でも、海外に出ると、それが決して当たり前ではないことに気づきます。

先日、KOKOが、海外生徒と日本人生徒が半分ずつ集まった、日本文化をテーマにしたサマーキャンプに参加した時、こんな話をしている日本人生徒がいたそうです。

「世界の人と関わることで、日本の良さが分かった。」

海外を知ることは、日本を否定することではありません。
むしろ、日本をもっと好きになるきっかけになる。
だからこそ、子どもたちには世界を見る経験をしてほしいと思います。

シンガポールが教えてくれること

シンガポールがここまで成長した理由の一つは、人を育てることに力を入れてきたことです。
資源が豊富な国ではありません。
だからこそ、「人」が一番大切な資源だと考えてきました。

世界中から人を受け入れ、異なる文化を持つ人たちと共に成長してきた国です。
もちろん、シンガポールにも課題はあります。競争の厳しさやプレッシャーもあります。
でも、その環境の中で育つからこそ、世界の中で生きる感覚が自然と身につく部分があります。

「日本も、もっと世界とつながることが必要だと思う。」

「日本の良いところを持ったまま、もっと外に出ていけばいいと思う。」

日本が目指すべきなのは、シンガポールになることではありません。
日本らしさを持ったまま、世界とつながること。そこに日本の可能性があると思います。

これからの子どもたちに必要な力

これからの時代、子どもたちに必要なのは何でしょうか。
英語力でしょうか。学力でしょうか。もちろん、どちらも大切です。
でも、それだけではありません。

自分で考える力。
違う価値観を受け入れる力。
自分の考えを伝える力。

そして、自分のルーツを大切にしながら世界と関わる力

私は、それを「グローバル力」だと思っています。

シンガポールで育ったKOKOとの会話を通じて、改めて感じたことがあります。

世界で活躍する人とは、どこか別の国の人になることではない。
自分自身を持ったまま、世界の人と協力できる人なのだと思います。

日本には、日本にしかない素晴らしいものがあります。そこに世界を見る力が加わった時、日本の子どもたちはもっと大きな可能性を持てるはずです。

母として、そしてシンガポールで教育に関わる一人として。これからも、子どもたちが自分らしく世界で生きていける環境について考え続けていきたいと思います。

(全4話・完)

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